日本には美しい四季がありますね、春、夏、秋、冬です。
けれど、古くから受け継がれてきた暦では、一年は四つの季節だけではありませんでした。
春夏秋冬は、それぞれ六つの節気に分けられ、一年で二十四の「二十四節気」となります。立春、春分、夏至、立秋、秋分、冬至。今も耳にするこれらの言葉は、その節目を示すものです。
二十四節気を表にすると、こんな感じです。
四季は、二十四節気へ。
そして、一つの節気は、さらに三つの「候」に分けられ、72もあります。二十四節気は、七十二候へ。
風の温度、光の傾き、草木の芽吹き、鳥や虫の振る舞い。自然の中に現れる、かすかな変化。
春が夏になり、夏が秋になります。
その境界は、一本の線のようにはっきりしているわけではなく、季節は過ぎゆくものの名残と、これから訪れるものの兆しを重ねながら、少しずつ次の姿へ移っていきます。
その繊細な移ろいを見逃さず、一つひとつに名前を与えてきたところに、日本人の自然観と、時に対する感性が表れていますね。
秋は、一筋の風から始まります
2026年は、8月7日に立秋を迎えました。
暦の上では、その日から秋になります。けれど窓の外では蝉が鳴き、強い日差しが地面を照らしています。秋と呼ぶには、まだあまりにも暑く感じられます。
立秋は、「涼しくなった日」ではなく、それまで見えなかった秋の気配が、夏の盛りの中にかすかに現れはじめるころなのです。
立秋の最初の七十二候を、
涼風至——すずかぜいたる といいます。
涼しい風が、初めて立ちはじめるころです。
日暮れがわずかに早くなります。光の角度が変わります。空が少し高く見えます。蝉の声に、ひぐらしの響きが混じりはじめます。
情報としての季節、身体で感じる季節
SNSを開けば、誰かが撮った桜、入道雲、朝焼け、紅葉が、遠く離れた場所から次々と流れてきます。
AIに尋ねれば、「涼風至」(すずかぜいたる)の読み方も意味も、その由来も、数秒で知ることができます。
それなのに、窓辺を吹く風の変化には、案外気づきません。
情報として知る季節は増えましたが、身体で感じる季節は、むしろ薄くなってはいないでしょうか。
SNSの時間は速く流れます。
話題が生まれ、広がり、消えていきます。
立ち止まって眺める間もなく、画面には次の情報が現れます。
「今」はすぐに「過去」になり、私たちの注意は絶えず新しいものへと運ばれていきます。
七十二候もまた、約五日ごとに移り変わります。けれど、その時間の質はSNSとは対照的です。
SNSの時間は、私たちを「次へ」と急がせます。
七十二候の時間は、私たちを「今ここ」に留まらせます。
風が変わります。花が開きます。鳥が渡ります。虫が鳴きます。
一つの季節の言葉を数日間手元に置き、その兆しを探して暮らしてみませんか?
七十二候は、情報の速さに運ばれていく私たちの注意を、もう一度、目の前の世界へ戻してくれるでしょう。
歩く道や生活する時間によって、見つける季節は違います。
ある人にとっての立秋は、ひぐらしの声かもしれません。
ある人には、夕暮れが早くなったことかもしれません。
またある人には、店先に並びはじめた梨や葡萄かもしれません。
また、同じ日本でも地域によって季節の進み方は異なります。
だからこそ、自分の暮らす場所で、自分なりの季節の兆しを探してみたいと思います。
「夕方の風、少し軽くなる」
「アイスコーヒーの氷、溶けるのが遅くなる」
「駅へ向かう道に、長い影が戻る」
「夜、エアコンを止める時間が少し早くなる」
そんな現代の候があってもよいのではないでしょうか。
気づいた人のところから、秋が始まります
AIの時代に、知識はますます手に入りやすくなります。
だからこそ、何を知っているかだけでなく、何に気づいたかが、これまで以上に大切になるのかもしれません。
七十二候を知ることは、昔の暮らしに戻ることではありません。
AIに季節の名前を尋ね、SNSで誰かの秋を眺めながら、それでも最後には画面から顔を上げ、自分の頬をなでる一筋の風を確かめてみよう。
風の中に秋を聞き、虫の声に時の移ろいを感じ、今日という日の中にある小さな季節に気づいたとき、私たちは、自然とともに時を生きてきた日本人の感性に、もう一度触れることができるように思えます。
七十二候を知ることは、昔の暦に戻ることではありません。
今日という日の中にある、小さな季節を見つけてみたいな。
立秋の今日、私の部屋の窓の向こうには、台風の風が吹き荒れています。
風が秋を運んできたのかもしれません。
あなたは秋を何から感じられますか?





ゆかりっくさん、こんばんは🌷せっかく四季のある日本に住んでいるから、風の温度、日の光の様子、そんな少しの変化に気づき楽しめる感性を持ち合わせたいなと思いました☺️実際はここ数年、春と秋がなくなってきたなと寂しい思いがあります。そんな中でも四季の移ろいに気付ける目線をもっていたいです🍀情報ではなく目や肌で感じたいですね✨️